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【レポート】JAISA「スマートアグリシンポジウム2019 in 東京」

さる3月7日(木)、日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(東京・千代田区)にてJAISA(日本農業情報システム協会)主催による「スマートアグリシンポジウム2019 in 東京」が開催された。


本シンポジウムは、農業の課題をITで解決する「スマートアグリ」に取り組む企業が最先端のソリューション、センサ、サービス、そして農業ITの未来について語らう会として、セッション1では「スマート農業の過去・現在・そしてこれから」、セッション2では「そこが知りたいスマート農業」と題したさまざまな講演とディスカッションが行われた。

講演風景

別所智博 氏

まず、会をはじめるにあたって、農林水産省 技術統括審議官兼農林水産技術会議事務局長 別所智博氏より挨拶が行われた。


同氏は、ロボティクスという面において、近年、自動運転トラクターやドローンなど、今後の日本の農家を支える非常に大きな技術が登場してきたことは非常に喜ばしいことだと述べた。


また、情報部分に関しては、生産側から消費側に、消費側から生産側にといった双方向に情報を流せるシステムを構築することで、生産者と消費者を近づけ食品ロスを少なくしてくとが可能になると語った。


続いて、セッション1のテーマを「スマート農業の過去・現在・そしてこれから」として、5名の演者による講演が行われた。

寺坂祐一 氏

最初の登壇者は「農家が現場で作った通販管理システム」と題して寺坂農園株式会社 寺坂祐一氏である。


寺坂農園は、年間約33,000玉生産しているメロン専門農家で、生産したメロンはすべて直売所と通販にて直接販売としている。同社では、FacebookやTwitterといったSNSに非常に注力しているとのこと。


同社では、ダイレクトマーケティングという手法を取り入れ、売上をのばしてきたが、売上が伸びるにつれ市販の販売管理ソフトでは対応できなくなった。そこで、農家のための販売管理システムを自社で開発した。それにより経営は安定したが、不安もあった。それは、顧客データの消失である。


寺坂氏曰く「顧客リストはお金よりも大事」とのこと。そこで、北海道日立システムズ社により自社システムをクラウド化した。これにより最も重要な顧客データをハードディスクの破損などにより失うという事態が改善したとのことである。

最後に同氏は、今こそ農家自身が生産物を売る力を身につけることが大事だと述べ、それにより、より強い農業になっていくのではないかと思うと、今後の農家の進むべき道を示唆した。


持田宏平 氏

次に、「農業IT“みどりクラウド”の進化」と題して、株式会社セラク 持田宏平氏が登壇した。

同社では、圃場の環境モニタリングや農作業の管理記録がきる「みどりクラウド」サービスを提供している。


同社によるシステム開発のコンセプトは、「初期導入コストは低く」「だれでも簡単に使えるUI/UX」「手間をかけなくてできる」「既存設備に簡単に導入できる」の4つ。


「みどりクラウド」では、各種データを見える化するだけでなく、異常な状態を検知・通知機能や、気象予報のデータとも連動するなど、さまざまな機能が搭載されている。現在、全国1,400件(2018年9月時点)の農家で活用されており、同システムを活用することで、収量が20%アップしたとの事例もあるという。


最近では、取得したさまざまなデータを活用し、“病虫害の発生原因の特定”や“収穫量予測”といったデータ分析のサービスもはじめているとのこと。今後はさらに農業ビッグデータを活用しすることで、農家の生産支援していきたいと新たな取り組みへの豊富を述べた。


片岡幸人 氏

続いて、kintone(キントーン)を活用したオーダーメードシステム「営農者の環境に寄り添ったICTサービスを目指して」として、株式会社ソフトビレッジ 片岡幸人氏が講演した。


同社は、IT技術で地方の課題に挑戦している企業である。現在、各得意分野をもっている業者のサービスをAPIにて連携し、そのプラットフォームとしてkintoneを活用したシステムを構築している。


kintoneを用いている理由として、さまざななアプリを簡単に低コスト(月額1,500円/人)で作成できるため、また他のツールと違い、チームでの仕事をスムーズに進めることのできるコミュニケーションの仕組みを備えているからであるとkintoneの利便性について説明した。


今後も、kintoneを活用し、自社サービスにこだわることなく、各社の良いサービスをAPI連携し、営農者の状況い寄り添ったサービスの実現を進めていきたいととのことである。


松本健平 氏


次に、株式会社アイエスエイ 松本健平氏により、「農業IT化は、ももことあやかで出来ること広がる、拡がる」の講演が行われた。


同社より提供している「ももことあやか」は、LoRa無線方式の環境監視制御システム。同製品の開発は、“長く使いたい”“メンテナンスコストを抑えたい”“電気工事・ネットワーク設備のコストを抑えたい”というユーザの声により実現した。


「ももことあやか」の最も大きな特長は、搭載されているLoRa無線方式にある。LoRa無線は、低消費電力で遠距離の通信を実現する通信方式で、Wi-Fiなどでは届かない場合でも問題なく繋がるという。また、同製品は、メンテナンスフリーで10年バッテリー交換なし、IP67の防水仕様、動作温度-30℃~+75℃といった農業現場の環境に適した仕様となっている。


池本博則 氏

セッション1の最後の講演は、「スマート農業推進のためのこれからの人材育成・戦略について」と題して、株式会社マイナビ 池本博則氏が登壇した。


同社では、2018年8月に総合農業情報サイト「マイナビ農業」を立ち上げ、日々農業に関するさまざまな記事を掲載いている。また、アグリテック技術をもつ企業と農家を結びつけるといった取り組みも行っている。


現在日本では、世界的にみてもAIまたはアグリテックの開発技術者が不足していると同氏。このような現状を踏まえ、今後同社では、「アグリテック特化型の開発者育成事業」や農家にアグリテックを理解・活用してもらえるよう「日本一わかりやすい、アグリテックの研修事業」といった活動を行っていくとのことである。


続いて、セッション2では「そこが知りたいスマート農業」として、5名の演者により講演が行われた。



嶋崎田鶴子さん

セッション2でまず最初に登壇したのは、「トップシステムからスマート農業」と題して、有限会社トップリバー 嶋崎田鶴子さん。


トップリバーは、レタス・白菜・キャベツなどを栽培する農業生産法人でありながら、新規就農者育成法人としての活動も行っている。


同社の目指す人材育成は、農業生産者を育てるだけではなく、“農業経営者”を育てることだと嶋崎さん。農業経営者として重要なことは「持続させる」ということ。その部分にデータの蓄積やデータを活用するスマート農業が必要になってくると語る。


そして同社ではこれを実現するため「トップシステム」を構築している。トップシステムを構築するうえで重要視したのが「予実管理できるシステムにすること」、そして「販売から逆算して計画を作成できる」ことである。また、他のシステムとも連携できるよう、蓄積したデータをcsvにて出力できる仕組みとなっている。


最後に嶋崎さんは、今後のスマート農業に期待することとして、「ICTが単なる技術ではなく、それを活用してしっかりと生産者が利益を得ることができる技術が増えてくことを期待しています。そして、それにより、農業が儲かる職業として認められるだけでなく、農家の働き方改革にも繋がるものだと思っています」と述べ講演を締めくくった。


岩佐 浩 氏

次に、「作業動線の可視化と作業安全」と題し、株式会社アイエスビー東北 岩佐 浩氏が登壇した。


同社は東日本大震災のあった年に設立された企業で、当初は復興支援ということから、同社のもつ組込み技術を活かし、海水を被った土壌センシングシステムを提供していた。


復興支援のなかで農家よりICT活用の高いニーズがあったのは、遠隔による農地の監視であった。これは津波浸水被害による農地の移転により職住分離が増加したことによる。そこで、作業動線を可視化するシステムを開発した。


このシステムでは、“誰が(何が)”“どこにいるか”を可視化できる。作業者の動きを知ることができ、熱中症で倒れた方をいち早く知ることができるなど、作業者の安全を確保することにも寄与している。


現在同社では、取得したデータを活用させていただくことを前提として、このシステムを10年間無料で貸し出している。


大野浩一 氏

続いて、株式会社NPシステム開発 大野浩一氏が登壇し、「“web-Watcher”の取り組みについて」として、同社で開発・販売している環境モニタリングソリューション「web-Watcher」の紹介を行った。


「web-Watcher」は、圃場にセンサノードを設置し、気温・湿度、土壌水分、日射量・雨量、CO2濃度などを取得することができる。これら得られた情報はクラウドに上げられ、PCやスマートフォンなどで、いつでもどこでも圃場の様子を確認することができる。また、「web-Watcher」には、現場で簡単に記録できる「農業日誌」の機能も備えている。


環境モニタリングの目的は、圃場の環境を見える化し安定した生産を図るだけでなく、栽培の行程パターン化することで誰でも一定の判断ができることにあると同氏。またモニタリングよって見えてきた問題を分析し対応することで改善サイクルを回ることが最大の目的であると述べた。


森 成徳 氏

続いて、「農業経営改善と、fintechベンチャーが目指す役割」と題してfreee株式会社 森成 徳氏が講演した。


同社では、会計ソフトや給料計算、労務手続きがクラウド上でできるサービス提供しているが、本年より、農業所得の確定申告への対応も開始した。農業従事者が高齢化している中で、“1人当たりの生産性を上げる必要がある”“農地の集積化が進み農業の法人化が増えている”といった状況から、本サービスが開始したとのこと。


今後同社では、「面倒な事務作業を自動化する」として、領収書などをカメラで撮影しAIで自動に帳簿付けでるといった機能や、クラウド化によって農場の運営状況をリアルタイムに可視化し、会計事務所や専門家と情報共有していくといったことにより注力していくとのことである。


最後に、「農業×IT」というと、生産に関わる技術に注目されがちだが、「農業の経営・バックオフィス」を少しでも改善できるよう支援していきたいと述べた。


岡安崇史 氏

最後の講演は、「ICTを用いたイチゴの省エネ栽培・収量予測技術の開発」と題し、九州大学 大学院農学研究所 岡安崇史氏が登壇し講演が行われた。


本研究でもっとも重要なのは、光合成をどのように最大化させていくか、そしていつ植物に光合成をさせるかにあるとのこと。そこで、局所適時環境調整技術により、光合成・転流動態および成長・収量に及ぼす影響を解明することにより、本技術の有用性を実証しており、その実証にICTを活用している。


たとえば、イチゴの高設ベッドから排出される廃液の特徴を調べる、また深層学習で得たイチゴ生育特徴量を栽培管理に利用するなどである。


本講演で発表された研究結果は今すぐ農家に導入できるものでもないが、大学という研究機関ならではの、意欲的な研究事例とその成果として紹介された。


本シンポジウムでは、ICT企業だけでなく、実際の農業従事者の現場経験に基づいた講演により、スマート農業の現在位置と今後の課題というものが良くわかるイベントとなった。

講演プログラムは以下のとおり。


【プログラム】

◆セッション1「スマート農業の過去・現在・そしてこれから」

  • 「農家が現場で作った通販管理システム」/寺坂農園株式会社 代表取締役 寺坂祐一

  • 「農業IT“みどりクラウド”の進化~農業のデータ化からデータを活用する農業へ~」/株式会社セラク みどりクラウド事業部事業部長 持田宏平

  • kintone(キントーン)を活用したオーダーメードシステム「営農者の環境に寄り添ったICTサービスを目指して」/株式会社ソフトビレッジ 代表 片岡幸人

  • 「農業IT化は、ももことあやかで出来ること広がる、拡がる」/株式会社アイエスエイ ソリューション営業部 部長 兼 マーケディング担当マネージャー 松本健平

  • 「スマート農業推進のためのこれからの人材育成・戦略について」/株式会社マイナビ 執行役員農業活性事業部・事業部長 池本博則

◆セッション2「そこが知りたいスマート農業」

  • 「トップシステムからスマート農業」/有限会社トップリバー 専務 嶋崎田鶴子

  • 「作業動線の可視化と作業安全」/株式会社アイエスビー東北 取締役 岩佐浩

  • 「web-WatcherR」の取り組みについて/株式会社NPシステム開発 システム開発本部・本部長 大野浩一

  • 「農業経営改善と、fintech ベンチャーが目指す役割」/freee株式会社 業界専任チーム 第1次産業 主担 森成徳

  • 「ICTを用いたイチゴの省エネ栽培・収量予測技術の開発」/九州大学 大学院農学研究所・准教授 岡安崇史

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